第一志望の傾向
令和7年3月の公立中学卒業予定者 (令和6年度現在の公立中学3年生) は、77,856名で、前年を252名 下回ります。公立中学3年生の数は、5年後(現小学4年生が中学3年生になる年度)に約8万人でピークに達したあと、そこから8年間で約18000人急減、さらにその後2年間(現1歳児、0歳児)も減少が続きます。都立全日制高校第1志望者の割合は連続して減少しており、今回ついに58.7%となり60%台を切ってしまいました。一方、私立全日制高校(国立・他県含む)第1志望者は大幅に増加しました。16年前のリーマンショック以降、都立第1志望者の割合は70%台でしたが、7年前に私立志望者が増加し、その後さらに私立高校への流れが進み、今年度はその流れが一気に加速しました。最近の8年間で、中学校の1クラス(30~40名)あたり平均で3名程度が都立高校から私立高校へ第1志望先を移したことになります。要因は、東京都版の私立高校の授業料軽減の拡張策(実質授業料無償化の対象になる家庭年収の上限が760万円→910万円→制限なし)や、私立高校の入試相談制度(コロナ禍で早く合格を決めたい心理と結びつく)、にあると推測できます。
ただ、都立か私立かという選択以前に、そもそも全日制高校以外(定時制、通信制)への進学を希望する生徒が以前より増えているという事実もあります。東京都教育委員会の就学計画では、今のところ全日制高校への計画進学率を93%としていますが、実際の進学率が86.5%で、欠員が生じている都立全日制高校も多くあることから、今後は2年に1度ぐらいの頻度で1%ずつ引き下げていったり、1学級あたりの収容数(現在は普通科40名、多くの専門学科35名)を見直したりすることも予想されます。
実際、私立通信制高校を志望する生徒は増え続けています。平日に通学するタイプ(週1日・3日・5日など)や、ネットを活用した授業形態、多様な授業内容は、コロナ禍を経てさらに生徒や保護者からの人気が高まっているということでしょう。
都立高校の現状
都立高校の学科別に志望者数の前年比較をしてみると、普通科は約3500名減少、商業科は微減、工業科は微増、農業科は60名増(最近は増減を繰り返しています)、家庭科微減(23区内の減少が続いています)、総合学科100名強の減少(連続増から一服、倍率は二極化気味です)となっています。倍率が落ち着いている例として、小山台・田園調布・井草・日本橋などがあり、復調してきている例として、駒場・南葛飾・国分寺など、また新校舎効果も加わって堅調な例として、豊島・江北・竹台・城東などが挙げられます。他にも、上野・足立・小岩・晴海総合・工芸などは安定した人気を保っています。逆に、志望者が減っているのは、広尾・竹早・文京・府中・赤羽北桜(調理)などです。
普通科以外では、専門色がはっきりと伝わる学科や、時代の要請 (グローバル化・情報技術化・デザイン・美術・舞台表現・動物・環境系…)に即した学科、身につけた資格・技術・感性が自身の一生を充実させたり豊かにさせたりすると思える学科は人気があります。 例としては、国際・工芸(デザイン・グラフィック)・園芸(動物)・瑞穂農芸(畜産)・墨田工科(自動車)などが挙げられます。
都立高校の今後の動向
校舎改築途中の学校や計画段階に入っている学校は、志望者の動向に影響を及ぼします。高校3年間の学校生活を念頭に置けば、グラウンド整備や各種施設改修の状況も重要です。すでに校舎・施設・グラウンドが完成している学校としては、日比谷・板橋・江北・竹台・足立・足立新田・南葛飾・城東・小岩・篠崎・王子総合などがあります。都立定時制単位制高校 (昼夜間定時制)は、生徒の多様性・不登校・学び直しへの対応が期待でき、居心地のよさなどもあり、中退率の低下にもつながっています。チャレンジスクールとして、令和4年度に小台橋、令和7年度に立川緑が開校され、普通科とは違う特色のある教育が期待されています。